公演情報
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■coba

出演:coba(acc)/天野清継(gt)/バカボン鈴木(bs)/天倉正敬(drs)

2017/1/15(日)
新潟市音楽文化会館 (新潟県)
[一般発売]
2016/11/5(土)10:00〜

2017/1/21(土)
日本橋三井ホール (東京都)
[一般発売]
2016/10/8(土)10:00〜

2017/2/8(水)
BIGCAT (大阪府)
[一般発売]
2016/10/8(土)10:00〜

2017/2/10(金)
広島クラブクアトロ (広島県)
[一般発売]
2016/10/15(土)10:00〜

2017/2/17(金)
高知市文化プラザ かるぽーと 小ホール (高知県)
[一般発売]
2016/10/15(土)10:00〜

2017/2/18(土)
高松オリーブホール (香川県)
[一般発売]
2016/10/15(土)10:00〜

2017/2/19(日)
W studio RED (愛媛県)
[一般発売]
2016/10/15(土)10:00〜

2017/3/18(土)
宮崎 WEATHER KING (宮崎県)
[一般発売]
2016/11/19(土)10:00〜

2017/3/19(日)
鹿児島CAPARVOホール (鹿児島県)
[一般発売]
2016/11/19(土)10:00〜

2017/3/20(月・祝)
熊本B.9 V1 (熊本県)
[一般発売]
2016/11/19(土)10:00〜

2017/3/24(金)
大分DRUM Be-0 (大分県)
[一般発売]
2016/11/19(土)10:00〜

2017/3/25(土)
電気ビル みらいホール (福岡県)
[先着先行]
2016/11/7(月)12:00〜〜
[一般発売]
2016/11/19(土)10:00〜

2017/6/23(金)
cube garden (北海道)
[一般発売]
2016/10/30(日)10:00〜

2017/6/24(土)
小樽 GOLD STONE (北海道)
[一般発売]
2016/10/30(日)10:00〜

■音楽劇 大悪名 The Badboys Last Stand!

2017/5/24(水)
海老名市文化会館 大ホール (神奈川県)
[一般発売]
2017/2/4(土)10:00〜
演出/マキノノゾミ
音楽/coba
振付/南流石
「悪名/原作:今東光 脚色:依田義賢」より
出演:沢田研二/南野陽子/いしのようこ/土居裕子/那海
茂山宗彦/野田晋市/若杉宏二/田中隆三/冨岡弘/有馬自由/すわ親治/蟷螂襲/片岡正二郎/森下じんせい/木下政治/細見大輔
東風万智子/松永玲子/小椋あずき/山口智恵/宴堂裕子/千田訓子/小飯塚貴世江/土田早苗(特別出演)/山崎イサオ/加納幸和
演奏:coba/柴山和彦/久保祐子/古川淑惠/熊谷太輔


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CD/DVD情報
New!
mondo_coba_jacket.jpg「MONDO coba」
【CD album】
2012.1.25
2枚組全20曲
AVCD-38402〜3
ココロ燃える音がある!
20年目のcoba、解禁。

「旅する少年 stay gold」
【CD album】
2010.11.10
BOSC-0002
このアルバムを持って
旅に出よう!

「僕のエレキュート」
【CD album】
2008.11.12
BOSC-0001
エレガントでキュート
アコーディオンが可愛くしみる!

「groovy accordion night tour 2006 in Europe」
【DVD】
2007.3.07
VIBL-376
ヨーロッパを踊らせたcoba真骨頂のライヴ映像作品

「Boy」
【CD】
2006.10.25
VICL-62162
この男は一体どこまでやるのか!
まだ誰も聴いたことのない未来の音がここにある。

「super mania coba」
【best album】
now on sale
TOCT-26063-4
cobaはいつも新しすぎる!
デビュー15周年のスーパーベスト

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iTunesで試聴できます。
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コメントについて
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優れた人に出会うと心が弾む。
自分はとことん人間というものが好きなのだなあと思う。

西武線の石神井公園駅からちょっと歩いたところにある
イタリア料理店クラッティーニの倉谷シェフの料理が
最近頓にふるっている。
僕はもう随分と前から彼の料理のファンで、
あちこちの雑誌で紹介したり、
様々な機会に料理を頼んだりしている。
これは基本的に本当に優れている店をそういうメディアでは冒さないという
自分のポリシーに甚だ反してはいる。
が、練馬という特別な場所でごく斬新な料理を
作り出し続けている彼に対する敬意と、
来るのに少々勇気のいる都心から離れたこの場所に、
ひとりでも多くの人が訪れて繁盛してほしいという、
全く余計なお世話的感情からついついこの店に関しては
饒舌になってしまう。
料理というものが人そのものから生まれることは
前にも書いたけれど、
ここのところの倉谷シェフの料理を見ているとそれが
ごく正しいことを感ずる。

最近僕は彼にある人物を紹介した。
長野県で有機農業を営むリチャード氏。
といってもリチャード氏は純粋な日本人だ。
この地域には彼の他にもフランソワ氏やセバスチャン氏
といった素敵な酒や野菜やチーズや料理の作り手たちが
ひしめいている。
正に文化は地方にあり…だ。
彼らの作り出すものは、
彼ら独特の哲学から自然に生まれ出る。
曰く…
山に習い、
空に習い、
動物達に習い、
木々や草に習う…
のだそうだ。

その素敵な彼らの催す酒宴の席に、僕は度々招待され、
そこで展開されるごくハイセンス、
ハイクオリティな料理と会話を多いに楽しみ、
余興ついでに彼らの性格の特徴をもじって
これらのあだ名を僕が勝手につけて呼ばせてもらっている。
フランソワは、
独特のエスプリとアイロニーを持ち合わせ、同時に
不屈の革命精神を抱き続けるところからそう命名した。
リチャードは、
シャイでジェントルでありながら、結構マメなところから
英国紳士の代表格であるこの名を付けた。
ちなみにセバスチャンは……もちろん殉教者系だからだ。

さて、リチャードの作る特別な野菜の話を、
前から僕は多くのシェフ達に語ってきた。
通り一遍で表面的なリアクションの多い中で、
倉谷シェフは面白いように強い興味を持ってくれた。
そしてこの2人を僕は引き遭わせることにしたのだった。

特別な人々には特別なものを供さなければならない。
僕はこの日の出会いを演出する為に
2日間をかけて能登半島に行き、
特別な魚(!)と酒(!)を仕入れてきた。
フフッ!お待たせしました!
4回にも渡った『呪縛』に満ちた長〜い前ブリ(鰤)の
因果関係がようやく今ここで明らかにされちゃうぞ!!
そう!全てはこの為だった。(なぁんてね)

倉谷シェフと寒鰤と菊理媛を乗せた僕の車は、
長野へと向かう高速道路をひた走った。

山に近づくにつれ、雪が深くなって行く。
リチャード夫妻は高速を降りてから1時間ほどの山あいに
住んでいる。このあたりは夏にはホタルなんかもいて、
なかなか好いドライブコースなのだが、雪に覆われた冬は
一転して厳しい山道に様変わりしてしまう。

そういえば、その昔に能登から長野へ寒鰤を担いで運ぶ
商人がいたらしい。
極寒の山々を超え、彼らが歩いた道の事をいつしか人々は
「鰤街道」と呼ぶようになったそうだ。
彼らが能登から遠ざかれば遠ざかる程
その鰤の値段は跳ね上がり、最終地では
何百倍もの値段で取り引きされたという。
目的地に着いた商人と鰤は、さぞ大きな達成感に
包まれたことだろう。
そんな話を聞いていると、
20年前に例の寿司屋で僕に供された
『まな板の上で誇らし気だった、奴の顔、
見事に鍛えられ、ぱんぱんに張ったその勇姿…』が
目に浮かんできてしまう。
それにしても人間というものは時代が変わっても
結局ずっと同じようなことを繰り返しやっているものだ。
鰤街道から何百年も経った21世紀に、僕は同じように
能登の港から長野の山中に寒鰤を運んでいる。
まあ当時と違うのは、例のうるさいカーナビのお陰で、
道に迷って雪の山奥で
鰤と心中する心配がないことぐらいか…。

……すると、そのカーナビが言った…
マモナク…リチャードサンノ…ハタケニ……トウチャクシマスヨ…
コバサント…ブリト…ククリヒメノ…
ナガイ…タビノ…シュウテンデス…
「えっ?」と僕!
「クスッ」倉谷シェフが微笑んだ。

リチャード農園の一画に作られた
厨房付きのダイニングルームには、
いつものメンバーが集まってきていた。
そして一枚板で作られた大きなテーブルの上には、
農園で採れた野菜をふんだんに使った料理が
所狭しと並べられていた。
はるばる東京から冬の道をやってきた男2人に、
山の友人達はとても優しかった。
どの料理も素材を生かしたシンプルなもので、
リチャード氏の野菜の味をそのまま倉谷シェフに伝えたい
という彼らの真直ぐな思いがにじみ出ていた。

僕は車から鰤と菊理媛の入った箱を取り出し、
ダイニングに運んだ。
一同の歓声とともに見事な寒鰤が数日間の眠りから覚め、
誇らし気にその勇姿を現わした。
すごい御馳走をはるばる能登から運んだ僕は、
鰤街道を踏破した商人よろしく一番奥の席に鎮座させられ、
皆から様々な賛辞を浴びせられた。
それは、みずからものを造って人々の心を動かし続けてきた僕が、
初めて触媒としての喜びを知った瞬間でもあった。
その寒鰤は、集っていた凄腕料理人S氏によって見事に
さばかれ、彼の友人の陶芸家による素晴らしく芸術的な器に
盛られてテーブルのまん中に置かれた。
最高の山の幸と最高の海の幸が揃った…。

S氏の計らいで、このような田舎の山の中で
どうしてお目にかかれるのかという程の
素晴らしく高貴な萩焼きのぐい飲みが桐の箱から取り出され、
それぞれの前に置かれていった。
僕は菊理媛(くくりひめ)を開栓し、皆に振る舞った。
リチャード氏と倉谷シェフとの出合いに皆で乾杯し、
僕は心の中でこっそり
この菊理媛を僕に教えてくれた京都の料亭のおやじさんに
感謝を捧げた…。
10年以上寝かせた菊理媛のまろやかで優しい味わいは
一同の心を打った。
なんとも優雅な酒だ…。

リチャード氏の野菜はさすがに味が濃く、苦味、渋み、
甘味などがはっきりと舌に突き刺さってくる。
凄い迫力!!
作り手の気持ちと哲学がぴりぴりと伝わってくる。
ゆっくりと酒と野菜と魚を味わいながら、
それでも菊理媛の一升瓶は
あっという間に空になった。
僕は次に菊理媛とともに持ち帰った、
菊姫の無濾過(地元にこの季節のみ限定数
出荷される濾過行程前の酒)を開けた。
これもまた皆の歓声に迎えられた。
濃厚なリチャード野菜に、
このキャラの強い酒は良く合った。

こういう若く荒々しい酒を飲み出すと、
どうしても恋しくなるのが、
フランソワ氏の密造どぶろくだ。
このあたりの地域は昔から床下で
どぶろくを造る風習があり、
フランソワ氏の家も先祖代々これを造り続けてきたそうだ。
しかしお祖父様の代に役場の手入れをくらい、
お祖父様は罰金を支払うために
親戚一同の家を死ぬ思いで借金して歩き、
いざお金を納めに役場を訪れてみると、
職員たちがついさっき没収した、
彼の造ったどぶろくで酒宴をはっていたそうで…。
そのお祖父様の遺言は
「この酒を孫子の代まで造り続けろ!」だったらしい。
嘘のような本当の話だ。
フランソワ氏はこのどぶろくを一升造るのに
米一升を使用しているそうだ。
こんな贅沢をして造られている酒が旨く無い筈がない!
僕はこれを初めて飲んだ時、
あまりの旨さに腰を抜かした…。
…しかし後で聞いた話によると、
この酒はよく人の腰を抜かす酒らしいということが解った。
韓国のマッコルリに少々似たキャラを持つ
このどぶろくには、酸味があり、何よりも旨く、
コクがあり、アルコール分を感じさせない。
従って皆ついつい飲んでしまう。
勿論実際は16度以上はゆうにある酒だから、結果、
トイレに立とうとしてどうしても立ち上がれないと
言うようなことはままあるらしい。
とにかく効きが良いのだ。
しかもどんなに飲んでも翌日全く残らない。
なんと偉大な酒だろう!
お祖父様の逸話をフランソワ氏から初めて聞かされた夜、
僕らはフランソワ氏の密造酒を
『レジスタンスの酒』と命名した。
曲がったことには徹底して抵抗してゆく
フランソワ氏の気質は偉大なお祖父様譲りなのだ。
なんと偉大なグランペールフランソワ!!
コングラトゥラシオン!!!

そういえばフランソワ氏は今日なにか用事があって
遅れて来るらしい。
前回ここを訪れた時、
僕がそのレジスタンスの酒をあまりにねだるので、
もう今年の分は全部飲んでしまって残っていないと
うそぶいていた彼も渋々
「cobaちゃんの為に特別に隠しておいた最後の一本を
持ってきちまったよ!」
などと言いながら、安焼酎の一升瓶に入れられた
そのレジスタンスの酒を抱えて来たものだ。

「そうだ!フランソワの酒が飲みたいね!みんな!!」
と僕。
「あっ!そうだ!電話しろ電話しろ!家中家捜ししてでも
一本抱えて来いって!」
とリチャード。
「そうだそうだ!せっかくcobaさんが能登の貴重な酒を抱え
て来てくれたのだから、どぶろく持って来にゃ、
フランソワは来させねえ!」
と誰か。
全く無責任なものだ。
もう結構酒が入ってきょとんと僕らを見ている倉谷シェフも、
わけも解らずに囃し立てる。
「うん。飲みたい飲みたい!」
すぐに誰かがフランソワ宅に電話を入れ、そのことを伝えると、
物静かな奥様がすぐに察して下さったようで、
まもなくフランソワがまたまた『最後の一本』を抱えて
現われた。
「いやぁ、cobaちゃんにはかなぁねえなあ。はっはっは!」
そのレジスタンスの酒を、
沈殿したにごりが浮かないように静かにテーブルに置き、
やや黄色がかった透明の上澄みを飲んでゆく。
僕同様にイタリアでさんざん色々な酒を飲んできている
倉谷シェフも、これの旨さにはさすがに言葉を
失ってしまった様子だった。

ここの人々はどんな小さな事にもはっきりした
モチベーションを持ち、ごくごくフォーカスされた結果を
導き出す「達人」達なのだ。

かくして彼倉谷シェフも、
この一見ただの田舎のおじさん達に見える人々の、
ごくエスタブリッシュされたハイセンスな感性と
技術と哲学の凄さにすっかりやられた一人となったわけだ。
「倉谷君、僕が騒いでいたわけが分ったでしょ。」
「はい。良くわかりました。」
菊姫の酒とレジスタンスの酒でかなりイってしまっている
頭で、僕らはこんな会話をしたようだった…。
 
 
それから暫くして、倉谷シェフから電話を貰った。
「良い鰤が入ったので食べにいらっしゃいませんか!」
僕は早速翌日の予定を早々に切り上げ、
石神井のクラッティーニを訪れた。
彼の料理はリチャード氏の野菜を得て、
また次の次元へとレベルアップしていた。
その夜、鰤とリチャード野菜の凄いフルコースを
彼は僕にプレゼントしてくれた。

料理は人だ……。
僕は改めてつくづく思った。

先日リチャード夫妻がクラッティーニを訪れたそうだ。
自分達の作った野菜をここまで斬新に使いこなす
倉谷シェフの料理に、
お二人ともさぞ驚き、喜んだことだろう。
触媒役の僕もとても嬉しい。

さて、触媒ついでに最近倉谷シェフが作ってくれた、
ある夜のディナーメニューを
紹介しておこう。
因に今ならのれそれ(穴子の稚魚)や
ホタルイカを食べさせて貰えるよ!

前菜

DSCF0066.jpg
フルーツトマトの種と水戸沖ののれそれオリーブオイル
レモン汁、ライムの皮をあしらって…

DSCF0068.jpg
白子、牡蠣のポレンタ焼き
春菊、三つ葉、イタリアンパセリ、たらの芽添え

DSCF0070.jpg
赤カブ、あいなめ緑のジュレソース
(カブの葉、エシャロット、大葉)
プロシュートクルードのせ

パスタ

DSCF0073.jpg
ひこいわし、ハクサイ、カイワレ、ナガネギ、
山芋おろしのspaghetti


DSCF0075.jpg
赤海老、蛤、そらまめ、オリーブオイル、青ノリ、
トマトの身とエキス、オレンジの皮、のstracci 


山葵とグレープフルーツのシャーベット


DSCF0077.jpg
トリッパ、ナガネギ、ニョッケッティサルディパスタの
tagliatelleトマトソース 
黒胡椒とレモンの皮添え


メイン

DSCF0080.jpg
鯨のソテー、ハナワサビ、グレープフルーツ、
トマトのせ
ゴボウ、ウド、山芋、ニンジン添え

DSCF0082.jpg
牛テールの赤ワイントマト煮(チリのカベルネ使用)
じゃがいも、セロリ、コーヒー豆添え
2002-03-05 10:00 この記事だけ表示   |  コメント 0

前回からの続きです。
はたして、奇跡的に菊理媛はその店に一本だけあった。
この旅で必ず巡り会う予感はあったが、
僕はよほど幸運だったようだ。
店の様子など、
出会いの瞬間を感動的に描くこともできるが、
まあまたいつかの機会としよう。

さて、僕の車は野々市に向かっていた。
昨年、例のY御夫妻に久しぶりにお会いし、
勇気を振り絞って、
もう20年も前に遡る、例の寿司屋の話をしてみた。
なんと御夫妻はそのことを憶えておられなかった。
まあ、その時だけでも10軒以上の店に案内された訳だし、
彼らにとってそのようなことは日常茶飯事であったろう…。

それでも僕は諦めきれずに、その店の場所や内外装の特徴を
記憶する限り、細かくお伝えした。
すると、御主人が仰った。
「cobaさん、その感じからすると、
それはK寿司に違いない。
あそこの御主人は良い仕事をする。
僕もあの当時、K寿司を時々
プライベートや接待で使っていた。少々値も張るが…うん。
あそこに違いない…。」

今回の旅は、誰にも知らせていない。勿論Y御夫妻にもだ。
これは自分を探す旅だ…。(なんてな。)

昨日、K寿司に予約の電話を入れると、
若い見習いさんが出て、
「うちは初めてですか?」と聞くので
「ええ、20年程前に…確か一度…」と、曖昧に答えた…。

車は野々市のその地域に入り、
僕の胸は期待と不安で高鳴った。
もうすぐあの店に到着だ。
はたして20年前に僕を呪縛したあの二貫との決着を
今晩つけることができるのだろうか?

僕が向かっているそのK寿司は、あの……
あの…入り口付近に大きな石をあしらった、
檜造りの格子戸に
藍染めののれんが初々しく揺れる……
…あの…店なのか…
女将は、若主人は、相変わらず元気にしているのだろうか…

機械のナビゲーションのお陰で、さほどの苦労も無く
僕はその……店に到着することができた。

優しく、抜け目の無さそうな女将さんが
僕を店に招き入れてくださると、
「えい!どうも、いらっしゃい!」
と、寿司屋の板さんにしては珍しく、
鼻の下にちょび髭を生やした
御主人が威勢良く迎えて下さった。
素敵に清潔で、清々しい空気が気持ち良く流れる
カウンターに、
僕は腰掛けた。

それは…明らかに…全く別の店だった…。
が、店が醸し出すものは、そこが確かに旨いものを出す場所
であることを語っていた。

「20年程前においで下さったとか…」
ぼそっと御主人がおっしゃった。
「え?…ええ…。20年前の…11月15日…でした…。」
「そうですか。それはそれは。」
はたして20年前の11月15日に、このK寿司がここに
あったかどうかなど、僕にはどうでもいいことだった。
その御主人の仕事は大変独創的で、しかも良い仕事であり、
ネタといい、飯といい、酒といい、つまみといい、
申し分なかった。
金沢ならではのネタに最高のプロセスを施し、
最良の状態に更に独創的なアイディアをちりばめた、
宝石のような見事な寿司だった。
英文科を卒業され、フランス語も少々話されるという
変わり種の寿司職人であられる御主人は、恐ろしい地獄耳で、
しかも客とのかけひきにもかなり長けていらして、
会話も楽しく、僕は時を忘れた…。
彼のにぎる寒鰤も、また物凄く旨かった…。
 
 
僕の今回の旅はここで終わりだ。
僕は最高の魚と最高の酒を土産に、東京へ戻る。
結局、あの店に出会うことは出来なかったが、
時間をかけて探そうと思う。
あの寿司屋は、20年前の僕の思い出と共に生きている。
酔いにまかせて色紙にサインを書いてしまった
苦い思い出と共に…。

素敵な店にサイン色紙は禁物だ。
そういうものを見ると、そこの店の主人のセンスを
疑ってしまう。
しかも、そこに名を連ねている芸能人(ヒャー!!!)や
タレント(ヒャー!!!)の味覚を想像すると尚更だ。
(ああ、それにしても何と嫌な言葉達だろう!!!
例えばタレントとは、元々「才能」を意味する
ヘブライ語「タラント」に端を発し、
更にその語源は重さや貨幣の単位である
ギリシャ語の「タラントン」に帰するものだ。
才能の無い者達に使用すべきものではない筈なのに。)

さて、僕のこういう文章を読んで、
描かれている店を本当に探そうとする
輩がおられるようである。
以前、京都の鰻屋の話を書いたが、
わざわざお調べ下さり、御丁寧なメイルを何通か頂戴した。
中には「あの店はもう無くなりました。」
などという御丁寧なものもあった。
大変にありがたくもあり、
同時にある意味少々幻滅感も伴う。
(僕の為にわざわざリサーチをかけて下さった方々には
本当に大変申し訳ないのだが……)
ある意味、皆が正解で、間違いだと言える。

これらの世界観はあくまで僕の頭の中で展開されている
ものであって、当然大きくデフォルメされていると
お考え願いたい。
つまり、僕が事実のみを記述しているとは限らない……
ということ。
或いは、実はその京都の鰻屋は
単なる僕の想像力の産物かも知れないわけ。
この鰻屋が、実は今回書いた菊姫好きの御主人が
営む京都の料亭と同一店だったとしたらどうだ。
実はこの先斗町か祇園あたりに設定された店は、
僕の行きつけの料亭が
モデルになっているとしたら……。
決して意地悪では無く、私小説とはそういうものだ。
音楽という魔法で皆様を煙に巻くことが大得意な僕が、
文章という形で全く同様の作業を行わないとでも
お思いであろうか…。
何故って、僕の唯一の武器は想像力なのだから…。
それで人々を魔法にかけるのが僕の愉しみでもあるし。
まあそういう大きなリスクを冒してでも、
それでもという方は、
野々市のサイト検索なり、地元の方に尋ねるなり、
どうぞ御自由に。

それでもmail cobaは続くのだった……。
2002-02-05 10:00 この記事だけ表示   |  コメント 0
前回からの続きです。

氷見の港から東京に送った鰤は明朝到着の予定。
僕には東京に戻る前に
どうしてもやっておかなければならないことが2つあった。

石川県には優秀な日本酒の作り手が多い。
以前能登半島を旅した時も、輪島周辺にある数々の
小さな造り酒屋のクオリティの高さや、
それを販売する酒屋さんたちの意識の高さに
びっくりした経験がある。
なにせ輪島の酒屋さんは客が要望する酒蔵の使用する米や水、
杜氏名等は勿論の事、その酒造メーカーの代表の考え方や
経営状況、はたまた使用している酵母の番号まで
綿密に把握しているのだ。
それはもう或種哲学的な領域にすら到達している。

さて、僕が初めて菊姫酒造の造る酒に出会ったのは、
もうかれこれ13、4年前に遡る。
ある意味僕の人生の恩人でもある沢田研二さんが、
その年の暮れに初めて僕の自宅に御歳暮を送って下さった。
それが菊姫の酒だった。
その頃、菊姫は東京都内ではなかなか手に入りづらく、
作曲家の富田勲さんもまたこれの大ファンであられる
そうで、菊姫の酒飲みたさに
当時まだ都内に何軒も無かった菊姫を扱う店の中から、
わざわざ池袋にある居酒屋によく通われたという
お話しを伺ったことがある。
沢田さんはその年、竹久夢二を扱った映画の撮影で
金沢を訪れ、菊姫に出会い、
以来この酒をごひいきにされているらしい。
そんな訳で、毎年時期になると必ず沢田さんから
この宝物が送られてくる。
本来こちらから付け届けをしなければならない立場である
のに、沢田さんという人は
なんとも出来た人だ。いつの日か御恩返しがしたいものだ。

さて、カーナビが御丁寧に全てを説明しまくる僕の車は、
金沢市内を走り回っていた。
僕はある一本の日本酒を探して金沢市内の酒屋を巡っていた…。

菊姫の酒には独特の味と香りがある。
ある僕の友人はこの香りをぬか香と称したが、
確かにそういった糠やモミ殻のニュアンスを
強く感じさせるキャラクターを、ここの酒蔵の酒は持つ。
また別の友人は、しっかり造られた日本酒には必ず
多かれ少なかれこういったニュアンスの味が
伴うものだとも言う。
しかし、この菊姫のキャラの強さは相当際立っている。
少々大袈裟かもしれないが、
店で隣の客に菊姫が注がれると、その香りだけで
「ああ、この人達は菊姫を飲んでいるな」
と解ってしまう程だ。
そんな訳で、最初にこの酒と出会った時
まだ20代だった僕は、この糠臭さが良く
理解できなかった。
旨い酒、深みのある味、などの表現で言うことはできても、
何故これがこういうキャラで造られているのかが、
どうしても僕の理解の限度を超えていた。

この疑問を見事に晴らしてくれたのは、京都にある、
とある料亭での体験だった。
その料亭の御主人と女将はとても興味深い人達だ。
僕は以前、京都とパリの人々のキャラクターがある部分
酷似していると感じて、
京都=パリ説なるものを展開していたことがあるが、
彼らは正にそれを裏付ける京都側の代表格だ。
この店の席に座った瞬間から、
料金を払って店を出るまでの間、
一挙手一投足に至るまで全部観察されていると思って良い。
と書くと大きな誤解を招くことになろうが、
実際ここのサービスは徹底している。
この店で所謂不自由というものを感じたことが無い。
ここの女将は、客が今何を感じ何を望んでいるのかを
リアルタイムで解析し、
実行する、ごく高い能力を備えている。
しかも、決して押し付けや嫌味で無く、
それがごく自然な形でなされる。
殆どの場合、酒が入った客にはおよそ気付かれようもない
さり気なさだ。
しかし考えてみると、あれだけの細やかな気配りを
それぞれの客にするとなると、
当然相手がどんな人物なのかを察知するために、
なされている会話などに耳を澄ませているんだろう等と、
下衆の勘ぐりをしたくもなる。
だって客の感性や知性や知識をちゃんと見抜いて
サービスするんだもの、この女将。
(くどいようだが、これは僕の勝手な感じ方であって、
実際そそれほどでもないのかも知れない。こういうことは
個人的なことなので、まあ程々に読んでほしい。)

客が減ってくると、それまでカウンターの中に居た御主人は
座敷きの隅に腰掛けて、
お茶等をすすりながらボーッとしている風だが、
これがまた曲者。
彼の千里眼がまた超一流なのだ。
いや、むしろこの御主人にしてこの女将さんと言った方が
正しいだろう。

ボーッとしながら、彼は客の背中とカウンターの板たちの
動きと外の景色を
観賞している風では、ある…。
が、この男はただ者では無い。
客の背中を通してその客の人生を見、
板さん達の動きを通して、
彼らと客との微妙な関係の保ち方のバランスを見、
外の景色を眺めながら季節と自分との関係を察知し、
明日の食材に思いを馳せている。
(いや本当だ!!)
それが証拠に、いつも御主人が座敷きの隅に腰掛けると、
今までにも増して
カウンター中の板さん2人(御主人のお弟子さん)は、
ぴりっと緊張する。客席側から見られているのを
ひしひしと感じているに違い無い。
僕は幾度となくこの御主人のさり気ない一言に驚かされ、
冷や汗をかかされた。
まあ、そういうスリルを楽しみたいこともあって、
この店に通う訳だが…。
どこの店だって客を楽しませる為に苦労を厭わないのは
当然のことだが、この店に来ると、
超一流のエンターテイメントに接している気がする。
自分がサービスされても、
人がサービスされているのを眺めていても、
実に楽しく、実に面白い。
そういえば僅か12、3席しかないこの店に、
3組以上の客を今までかつて見たことが無い。
それ以上は恐らく目が届かなくなるため、
断ってしまうのであろう。

さてそんな御主人が、ある時座敷きの隅に腰掛けながら、
僕にこう聞いた。
「cobaさんは、菊姫の黒吟を御存じですか?」
「いいえ。僕が何時も飲んでいるのは、
加陽菊酒か山廃吟醸です。あ、あと加州菊酒も…
あ、それからにごりも…たまに…。」
「ほう。そんなに菊姫がお好きですか…。」
と、呟きながら御主人はカウンターの若い板さんに
「おい、cobaさんに黒吟を一杯飲ましたぁげてぇ。」
と告げた…。

金を芸術的にあしらった、
モダンなビードロ風の素敵なグラスに注がれた
菊姫の黒吟が、
僕の前にゆっくりと
静に置かれた。

若い酒の持つ、におい立つような香りは、
この酒には無かった。
2、3年寝かしてあるものに相違なかった。
僕はそのグラスを持ち上げて、香りを嗅いだ。

何とも忘れがたい瞬間であった。
それは、確かに菊姫のそれに違いなかった。
が、明らかにもっと高尚な、或いは高貴な香り…。
僕が今まで知っている菊姫が、
素晴らしく昇華されたものだった。

「なるほど!」

美しく旨い酒を味わった第一声にはおよそ相応しく無い
感嘆の声を、
僕は上げた。
しかし、それは菊姫という酒を知ればこその、
そして今までその香りを完全に理解できずに
きた者であればこその感嘆の声だった。

僕の中で言葉が勝手に弾けた…。
「この人達はこういう物を造りたかったのですね!
最終的に。
ああ、そうか!そうか。だから、ああいう香りなんだ。
そうか、そうか。…う〜ん。なるほど。
これかぁ!なるほどなぁ…。」

それは素晴らしく高貴なヒネ香であった。
菊姫独特のあの糠香や、蟹の甲羅をすり潰した瞬間に香る
あの独特な香りのニュアンス…
(これは、野生の山葵の葉を噛んだ時にも味わえるが)
…を保ちながら、
モミ殻をローストした時に香る、『焦がし』のニュアンスや、
きな粉をお茶に溶いた時に生ずる香ばしさと渋みとが
合いまった感覚、或いは岩茶のニュアンスなども
微かに感じる。
成熟した女性が身に纏ったらさぞ素敵ではないかと思える
香水……そんな感じだ。

更に言葉は続く。
「いやあ、なんで菊姫はああいう香りがするのか
ずうっと解らなかったんですよぉ。
なぁんだ。こういうことだったのかぁ。そうか、そうか。
うーん…。
こうなることを知っていればねぇ。ハハハ。」

僕のはしゃいでいる背中をずうっと嬉しそうな顔で
眺めていた御主人が言った。
「旨いですか。」
「ええ、ええ。旨いってもんじゃあないですよ、
あなた、これは。 なんていうのか、もう媚薬ですよ。」
「わっはっは。そんなに喜んでもらえて、わしも嬉しいわ。
なあ、女将。」
「はい、全くです。」と、女将。
すると、すかさず
「もしこれ飲んで普通の顔してはったら、一杯3万円や。 って
言おうと思うてました。
ははは。いや、これもう去年からわたし一人で
お客が帰った後にちびちびと飲んでる黒吟で、
もうあとこれしかありません。」
と、御主人は冷蔵庫からその残り僅かとなった酒の入った
一升瓶を出して、見せてくれた。

その時だ。
御主人が僕の心を鷲掴みにする一言を放ったのは!
「この黒吟は京都では殆ど手に入りません。
次また何時飲めるかと思うと、
ついついちょっとづつになってしまうんですわぁ。
でも、菊姫にはこれの上にもう一つありましてな…。」

「!…えっ?もうひとつ!?それはどんな酒ですか!
御主人!!」

「ああ、菊理媛といってな…。」
「菊理媛…。」
「はあ。でもこれは地元行ってもありませんよ。
まあ、飲めませんなぁ…。
わしもまだ一度も飲んだことありません。」
「はぁ……。」
「……。」
「菊理媛…ですか………。」

マモナク…モクテキチ…シュウヘンデス…
オンセイアンナイヲ…シュウリョウ…シマス…

もう今日何回も同じことを繰り返し喋り続けるカーナビが
そう言った…。
「おい、たまにはちょっと違うことも言ってみろよ。
その場所には行きたくありません…とか、
あるいは……
      ……この店には菊理媛はあります…とかさ。」

幻の酒を求めて、金沢市内の酒屋をはじから回っている
僕の車は、ある酒屋の前で止まった…。
それは、まぎれも無く、沢田さんが毎年送って下さっている
御歳暮の発送元になっている『お店』だった。
2002-01-31 10:00 この記事だけ表示   |  コメント 0